
#4|制限の正体はブランドの起源である
第1~3回では、地方都市の構造、自治体の目標設定、産業の担い手と生活者の距離を整理してきました。
私たちが描いてきたことはあくまでアウトラインであり、実際にはもっと複雑な事情や慣習が存在しています。
そのうえで、目的の重要性を考えると、インフラや地域の仕組みは「維持されて当たり前」の世界である。
維持の苦労は、関わる人にしか分からない。
想像されない苦しさがあるからこそ、気持ちが内向きになるのは当然だと感じます。
構造自体は長く日本で運用され、成果を上げてきました。
しかし時代は大きく変動し、どこでも「自助」を求められる時代になったことで、従来の仕組みだけでは成立させることが難しくなっています。
そのなかで、Combined Designらしく、この構造を「翻訳」していきます。
1|制限は価値である ― 青いリンゴの意味
私たちのメインビジュアルには青いリンゴを用いています。
これには少し意味があります。
リンゴを含む多くの収穫物には、必ず時間と制限が存在しています。
- 収穫量は決まっている
- 収穫時期も決まっている
- 天候に左右される
- 土地に縛られている
- 人の手間が必要
- 大量生産できない
いわゆる 制限の世界 です。
そしてリンゴは、主要な果樹の中でも特に手間暇がかかる。
摘果、葉摘み、剪定、受粉、収穫──
ほとんどすべてが人の手で行われます。
私たちがリンゴを選んでいるのは、その手間暇をいとわない姿勢と思いに対し、私たちもそうありたいという尊敬です。
制限を受け入れ、手間をかけ、時間を尊重する。
そのすべては「受け取る人に向けた思い」から始まっている。
青いリンゴは、「固定概念を超えた発想と価値の創出」 を象徴しています。
2|制限=ブランドの資源である
制限とは、本来ブランドの起源です。
近頃は、大量消費や付加価値による差別化など、あらゆる手段で消費を促す世界になっています。
しかし、本来の価値とは、
- 制限されていること
- 必要な人に届くこと
- その価値を通じて物語が生まれること
であると私たちは考えています。
ブランドとは企業や生産者が名づけるネームではありません。
ブランドとは、作り手から買い手へ物語が渡り、買い手がその物語を紡ぐ構造そのものです。
だからこそ、制限のあるモノ・コトはブランドの資源になりうる。
3|地方都市は“制限の塊”である
第3回でも書いたように、地方都市は制限の塊です。
巨大流通やグローバルプラットフォームのルールで何かをしようとしても、構造的に不向きです。
しかしながら、既存のルールを活用しないといけない事情もある。
大量に商品を都市部に送るには、本来生産する上で重要な要素を妥協しなければならない場面が出てきます。
しかも加工品と異なり、収穫も品質も天候という非常に難しい条件と向き合わなければならない。
長い期間をかけて苦労とプロセスを乗り越え、巨大流通に乗せた瞬間に、物語が立ち上がる前に消化されてしまう。
そこには物語もなく、 ただ消化される世界が待っている。
これは現代社会が「欲望消化型消費」に傾いているからでもあります。
消化されるとは、継続が難しく、本当の意味でブランド化することを阻まれるということです。
ブランド化したとしても、消化されてしまう。
4|消化ではなく、活用へ ― ファンの存在がブランドを成立させる
地域の資源を消化するのではなく、活用していくことが本来の在るべき姿だと感じます。
そして、ファンのために作り、届けることはとても重要です。
例えば──
ふるさと納税の返礼品で予約を受け付け、天候不良で予約数に応えられない場合。
- ファンでない人の多くは利用しなくなる
- 信頼を損ねる
- ファンは残念ではあるが、生産者の気持ちを考える
プラットフォームにどれだけ特定の地域のファンが存在しているかは分からないが、多くは前者の「ファンでない人」ではないかと想像します。
ブランドとはファンがあって成立する。
制限があるからこそ、ファンに向けてのみコミュニケーションをすべき です。
ファンだからこそ、
- その地域に訪れる
- その地域を応援する
- その物語を受け取る
一見、制限とは相手が感じる不便のように見えるが、実は制限とは 必要な人に必要なものを届ける仕組み だと私たちは考察します。
5|制限は資産である ― 未来を描く中心に据える
資源に限りがあるならばこそ、それは重要な資産です。
その資産を中心に据えて未来を描くことこそ、その街の「らしさ」でもあります。
制限は弱さではなく、未来をつくるための起源です。
◎まとめ(自治体向け)
第4回では、地方都市が持つ「制限」が価値であり、ブランドの起源であり、未来の資産であることを整理しました。
制限は弱さではなく、地域の物語をつくるための起源です。
第5回では、その資産をどう使い、目的と物語をどう立ち上げるのかを整理します。
ブランド・組織・商品に関する“違和感の整理”は、地域の価値の循環を整える実務としてもお手伝いしています。
