#1|人はどんな会社で働きたいと思うのか

人は、どんな会社で働きたいと思うのか。
この問いは、採用市場の変化だけでは説明できない。
企業の目的、働く人の生活文化、組織の構造──
そのすべてが絡み合っている。

ここ数年、人手不足によって会社の存続すら危ぶまれるという話をよく耳にする。
そもそも会社や組織は何故必要なのか。

会社はなんらかの目的を履行するために設立され、組織はその目的を達成するために作られる役割である。
本来であれば、目的を支えるための人材が自然と揃うはずだが、現実には会社の目的と働く人の目的は一致しない。
そのズレが、必要な人材の確保・維持・成長という領域で大きな課題となって表れている。

企業は「良い人がいたら会いたい」というスタンスを持ち続けている。
雇用主の判断に責任が伴う日本では、採用の最終判断は慎重にならざるを
得ず、その慎重さが「都合の良い人がいれば会いたい」という、どこかネガティブなコミュニケーションに変わってしまうこともある。

職種や条件を掲載するだけでは、応募者は集まらない。
かつては企業のネームバリューが採用に寄与したが、現在は企業が物語を語り、視覚化し、採用目的から入社後のイメージ(キャリアプラン)まで一気通貫で表現できなければ応募には直結しない。

情報社会では口コミや評価が共有され、掲載内容との整合性が精査される。
夢を語っても現実が異なれば信頼を損なうだけである。

転職者・求職者にとっては売り手市場が続いている。
企業が発信する内容が具体的にイメージできなければ、そもそも読んでももらえない。
企業側も応募者のポテンシャルを含めて間口を広げないと採用につながらない。
応募してもらうこと自体が難しい構図になっている。

転職市場は一見活況に見えるが、一つの会社で定年まで働く人材は希少となり、複数回の転職は一般的になった。
転職サイト・エージェント・ヘッドハンティングなど、人材に関わるサービスは多岐に渡り、 求人情報は何万~何十万件にも及ぶ。

企業側からのオファーも日常風景となり、求職者は「良い会社・条件があれば話を聞く」という立場に変わった。
興味がなければ、情報の波に埋もれてしまう。
これは情報量が多すぎて対応しきれないというのが現実だろう。

そもそも「良い人がいたら会いたい」という発想は、今や幻想に近い。
自社に向いている人材は転職市場には非常に少ない。
所属している会社でも必要とされている。
従って流出はしない。
必要とされる人材が市場にほとんど現れないという構造を示している。

応募者の確保すら難しいにも関わらず、採用後の現場との温度差にも苦労しているのではないだろうか。
採用してもすぐに離職してしまう定着率の問題は、現場の理解が追いついていない。

常時募集や通年採用という事実は、人が定着しないのではないかという印象を生みやすく、出会いの流れをさらに細くしてしまう。
求職者は求人そのものではなく、その背後にある“職場の生活文化”を読み取ろうとする。

多くの人と出会い、多くの人を迎え、その中から育つ人が現れることを期待する採用は、今の市場では難しくなっている。

だからこそ、採用は企業の事情だけでは成立しない。
働く人の生活文化と目的が重なる場所をつくれなければ、人は長く留まることが出来ない。

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