#3|夢中で働ける環境をつくるために

採用するのも大変、成長をサポートするのも大変──
これが人手不足の根本的な要因である。
大手企業は改善のために投資し、業務内容を明確にし、人が多く存在するという強みを、組織の資産として最大化できる。

しかし、多くの企業は中小企業であり、人手不足に直面している。
AIが未来に領域を広げても、近々の問題解決にはならない。

だからこそ、企業は“形だけの理想”や“飾られた物語”ではなく、自分たちの目的を真摯に共有する必要がある。

新卒も転職者も、世の中の企業の文化をある程度理解している。
企業は自分たちの目的を、生活文化の言葉で語り直す必要がある。

夢中になれる環境をつくるための“方向性”

夢中になれる環境は、制度だけではつくれない。
生活文化として整えるために、いくつかの方向性がある。

① 採用の目的を翻訳してみる
採用を計画した時、採用セクションと人材像・業務内容を所属先のメンバーと一緒に具体化する。
所属先の管理職の意向だけで決めることは避けたい。
人材像が固まったら、「事業・会社の目的と価値」に矛盾がないかを経営層と一緒に考えてみる。
この段階での矛盾は極力解消しておきたい。
方向性が固まった時点で、採用媒体の選定やバジェット、期間を明確にしておく。

② 企業の物語として生活文化を整える
募集要項には、企業のこれまでとこれからの物語を明確にし、キャリアプランと最初の業務を可視化する。
「自分のことだ」と思える物語を提示することが重要である。

③入社後の生活文化を支える仕組みをつくる
配属先のコミュニケーションを丁寧にし、必要であればメンターにマネージャー同等の地位を与える。
生活文化の翻訳者としてのメンターは、組織にとって重要な役割である。

入社後の生活文化を支える仕組みを整えることは、現場にとっても経営にとっても簡単ではない。
しかし、踏み込む価値は十分にある。

④ 面接を“物語の共同作業”として捉える
面接は選抜ではなく、応募者と企業の物語が触れる瞬間である。
互いの物語を重ねる場として捉える。

⑤ 目的の熱意を共有する
目標ではなく、目的に向かう熱意を共有する。
熱意が伝播しない環境では、夢中は生まれにくい。

これらは制度の改善ではなく、企業が自分たちの生活文化を丁寧に整えるための“方向性”である。

夢中になれる環境とは何か

人手不足の改善はどの企業でも大きな問題である。
目的を履行するために、人が中心となって組織は運営される。
人がいて初めて、組織は目的に向かって動き出す。

だからこそ、夢中で働ける環境とは、目的・生活文化・物語・役割設計が整っている状態である。
夢中は「気合」ではなく「環境」で生まれる。

出会いの価値を大切にする

採用に関わる人たちは、日頃から目の前の課題に向き合い、組織の目的を支えるために奔走している。
その努力があってこそ、企業は前に進むことができる。

応募してくれる人にとっても、面接は自分の物語と企業の物語が触れる貴重な瞬間である。
縁があったとしても、なかったとしても、その出会いが「意味のある時間だった」と感じてもらえることが、企業にとって最も大切な活動なのかもしれない。

人は、目的が生活文化として立ち上がり、自分の物語の延長として夢中で働ける会社で働きたいと思う。
その環境をつくることができれば、必ず「ここで働きたい」と思う人は現れ、 その縁は長く続いていく。

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