
#2|目的が現場でどうズレてしまうのか
日常の中で、企業の目的が現場にどのように影響するのかを観察できる場所がある。
私にとってそれは、スーパーマーケットだ。
多くの人が日常的に訪れ、各社のアウトプットが棚に並び、生活する人の気持ちや世の中の機微が静かに流れている。
目的がどのように形になり、どのように届いているのかを、最も分かりやすく観察できる場所だと感じている。
スーパーの棚には限りがあり、各社の商品が競い合っている。
PB商品の強化やSKUの圧縮、POSの数値など、流通の事情がそのまま棚に現れる。
その棚を前にして、メーカーは、自分たちの思いや意図が届かなかったことの厳しさを静かに感じることも多い。
そんなスーパーに、買い物客としてもほぼ毎日通う。
そこで気になるのは、企業と買い物する人の目的が同じ方向を向いているのかどうかという点だ。
流通企業にとっての目的は、「地域のインフラとして当たり前を維持すること」である。
近頃の企業の目標は、前年度の数字を超えていくことに置かれている。
数字、効率、維持、タスク消化。
企業の動きはどうしても内向きになりやすい。
一方で、買い物客の目的はもっと感覚的で、個人的で、具体的だ。
気持ちよく買い物したい。
その目的の下に、お得に買いたい、便利に済ませたい、安心して選びたい、
といった具体的な目標が静かに並んでいる。
つまり、企業と生活する人では、目的の質がまったく違う。
この目的のズレが、現場の空気にそのまま落ちてくる。
目的が内向きになると、現場のコミュニケーションも内向きになっていく。
気づくと、「いらっしゃいませ」や「ありがとうございました」といった、お客様に向けた言葉が静かに消え、従業員同士の挨拶だけが残る。
店は動いているのに、どこか閉じているような空気が生まれる。
この違和感こそ、目的のズレが現場に落ちてきたときの典型的な症状だと感じている。
例えば本部のMDを現場に落とし込む構造では、売場変更や細かなタスクが絶えず積み重なり、現場は手一杯になりながらそれらをこなすことになる。
やらされる仕事は重く、空気はさらに内向きになる。
一方で、目的が共有されている企業では、現場が主体的に動ける余白が生まれる。
売場の判断を現場に任せられるのは、企業と現場の目的が同じ方向を向いているからだ。
営業時間・タスク・売場・ルールはシンプルになり、従業員のコミュニケーションは内向きから外向きへと自然に変わる。
外向きの時間が生まれることで、従業員はお客様へ提案する余白を取り戻していく。
コアなお客様の売上は増え、店の空気は静かに開いていく。
企業とお客様の目的が同じ方向を向いたとき、店には自然と静かな活気が生まれる。
それが「良い雰囲気」と呼ばれるものの正体だと感じている。
だからこそ、目的はとても重要だと思う。